昨年あたりから、リフォーム業者をはじめ、家電量販店・大手ホームセンターなどでも「アスベスト調査・対策・作業・処分」についての案内が多く出されるようになり、みなさんも一度は目にされたことがあるのではないでしょうか。
2006年(平成18年)9月1日以前に新築工事着工された建物では、建築資材にアスベストが使われている可能性があり、工事に際してその対策がなされるよう法改正がありました。
そもそも「アスベスト(石綿)」とは、どういったものなのでしょうか。
アスベストは髪の毛の1/5000程度のとても細い鉱物繊維で、断熱性能や強度を高めるために、屋根材・壁材・石膏ボード・ビニル床材・接着剤など、2006年に法律で使用禁止とされるまで、幅広い住宅建材に使用されていました。
アスベストは、その繊維の細かさから、穴あけや破砕によって大気中に飛散しやすく、粉じんを吸い込むと無自覚のまま肺に蓄積され、数年から数十年後に「肺がん」や「中皮腫」といった命に係わる疾患を発症する物質です。
厚生労働省の人口動態統計によると中皮腫による死亡者は、令和元年には1,466人となっており、20年間で約3倍に増加しています。
このような背景から、法律により2023年10月1日以降の工事から「建築物石綿含有建材調査者」が石綿含有の有無を事前調査することが義務付けられました。また、施工時には「石綿作業主任者」を置き、「石綿取扱作業従事者」が作業にあたることが義務付けられました。
事前調査では、実際の目視に加え、以下のことを実施。
①お客様からご提出いただいた建築設計図書や公的証明書により建築年月日・面積・構造等を確認
②お住まいの使用建材を直接切り取り専門機関によりアスベスト有無を成分分析
③建材・住宅設備機器の製造者による確認
工事に際しては、アスベストの有無にかかわらず現場外に工事のお知らせを掲示します。
アスベストの適切な対策は、工事作業員のみならず、建物にお住まいの方や近隣住民の安全に欠かせないものです。
事前調査には費用がかかり、アスベスト非含有が証明できない場合には、養生・解体・搬出・処分の全工程で特別な措置が必要なため対応には費用がかかります。法改正後、千葉県でもアスベストに関する行政による抜き打ち立入調査が入り、法律違反の摘発数が急増し続けています。
手間も費用もかかることですが、関わる全ての人の命を守り、健康被害を出さないための大切な対応なのです。